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 嫌いな3文字がある。 愛しいのに憎い3文字。
 アイツがそれを口にすると、彼は必ず離れて行ってしまうから。

    3文字

 「なーなー、塚原ぁ〜。」
 「あ?何だよ。」
 「ノート見してv」
 不機嫌そうに寄せられた眉にもめげず、笑顔で頼めば机の中を探してくれる。
 結局の所、彼は優しいのだ。
 素直じゃなくて。 不器用で。
 こんなに愛しく思える人物を、俺は彼以外知らない。
 「そうそう。昨日さ、ドラマ見た?」
 出来るだけゆっくり写しながら会話を楽しむ。
 「昨日? 昨日は見てねぇな。」
 「え〜?じゃあ何してたんだよ?」
 もっともっと。塚原の事が知りたくて。 世間話を装った。
 滅多に味わえない2人の時間が堪らなく嬉しい。
 「パソコンでCD、ダビングしてたかな。」
 「CD? 何の?」

 好みを知るチャンスだ!!

 −−−−と、思った

 の

 に

 「 か な め 」

 教室のざわめきに紛れて発せられた3文字

 「? あぁ、祐希。」
 振り返れば、教室のドア近くに立つ浅羽が居た。
 「何してんの。行くよ、要。」
 昼食を持っているところを見ると、どうやら今日もいつものメンバーで食べるらしい。
 あわよくば、このまま一緒に昼食を取ろうとした俺の目論見を一瞬にして壊してくれた。
 「今行く。 わりぃ、ノート終わったら机に置いといてくれ。」
 自分の弁当を取り出し、浅羽の方へ寄って行く。

  また、邪魔されてしまった。

 浅羽が呼ぶと、塚原は必ず行ってしまう。
 否、彼だけじゃないのだけれども。
 塚原は優しいから、呼ばれると直ぐに行ってしまう。

   気に入らない

 『かなめ』と呼んでいるメンバーは特に。
 当たり前のように、掻っ攫っていくから。

 俺も。 俺も幼稚園の頃から一緒だったら、そうなれたのかな?
 それとも『かなめ』と呼べたら・・・・。
 俺の所に来てくれるのか?

 「・・・・かなめ。」
 向けられた背中に小さく囁くが。
 俺の3文字は、ざわめきにかき消されて、塚原が振り向く事はなかった。

 ふと、浅羽と目が合う。
 俺の口が形取った文字を理解したのかもしれない。
 その瞳が

 「渡さない。」

 そう言っている様で。
 俺も睨み返した。

 たった3文字で奪われようとも。
 彼だけは、諦められない。
      譲れない。
      渡せない。

 俺の3文字が届かないのなら。
 この3文字は彼らのものなら。

 俺は今度、違う3文字を塚原に伝えてみようか。

 望みが無くても、意識はして欲しいから。

 真っ直ぐに 見詰めて

  好きだ

 と。



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