だから何だっていうんだ


ぼんやりと頬杖をつく祐希の窓際の席までいき
おもむろにさっき無理矢理押しつけられた
可愛い柄の封筒を差し出す

浅羽祐希様

宛名にはそう
まるっこく、小さな字で書かれていた

「教室で話し掛けてくるなんて珍しいと思ったら
…なにコレ?」

祐希が封筒からのらり、こちらへ顔を向けた

「みりゃわかるだろーが
生徒会の後輩がお前のファンなんだってよ」

どこがいーんだか
そう呟いた瞬間

封筒は奪われ

ぴりり、と破かれる

およそ六分割


「おまっ何やってんだよ!?」

突然の祐希の行動に声を荒げる

当の本人はじっとこちらを見据え

「要こそ何やってんの」

は?

「本当はこうして欲しかったんじゃないの?」

馬鹿にするように薄く笑い
六分割された手紙を無理矢理握らせられた

「そのコに言っておいて
俺、好きなコがいるからゴメンナサイって」

そういつもの感情の読めない顔と声で言うと
立ち上がり
教室を出ていった

たぶん
ふらふらと
隣の教室の悠太にでも会いに行ったのだろう


手の中にはびりびりに破かれた手紙


本当はこうして欲しかったんじゃないの?


背中がひやりとした

びりびりの手紙

まるで自分が拒絶された気分

広い教室でいきなり迷子になった心境

―あいつ、好きな奴がいんのか…


だから何だっていうんだ


誰なのかとか気になる、とか

キャラじゃない、キャラじゃない
首を左右に振る

それよりも目の前の問題だろ

さて、手紙の送り主にはなんて言おう
泣かれるのだけは御免だからな


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